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2010/10/22

シネフィロ/パウ・ブラジル〜音楽の樹

中川です。

ほそぼそと続けているシネマ哲学カフェ。
10月の参加者は4名でした。

ブラジル映画祭の中から、音楽の「資源」という観点から環境問題を訴える
ドキュメンタリー作品「パウ・ブラジル」を取り上げました。

ブラジルという国の国号の由来になっているのに、自国民もあんまり存在を
知らないという悲しい樹「パウ・ブラジル」は、絶滅の危機に瀕しています。
でも、この樹が無くなったからって何が困るのか?
実はこの樹、バイオリンの弓の部分の材料として最も優れていると音楽家たち
の高評価をひとりじめにしているのです。染料として乱伐され、危機に瀕して
いる樹の評価が、音楽家たちによって語られていく・・・

まず、こんなことが話題になりました。
樹の価値と音楽という文化的価値が天秤にかけられているようだ。
樹を保護する意識は、音楽によって駆り立てられるだろうか。

ここで、映像を見た人たちの間で意見が割れました。
それは、音楽の「価値」に関わることです。

もし、この映画が一般的な「環境問題」の重要さを述べ立てているとするなら、
あんまり説得されないね、という意見がでました。
なぜなら、「音楽家」という人たちが「高尚な」文化としての音楽を奏でている
姿は、彼らの「価値」でしかないのであって、我々からは遠いものに感じられる
からです。

そのことはプロの白人たちが陶酔しながら演奏する映像に、遠いものを感じるか
どうかということにかかっていました。もちろん、それを遠くないと言う方もい
ました(その方は趣味でバイオリンをやっておられましたが)。
現地のブラジルの子供たちが、あまり楽しくなさそうにバイオリンを弾く姿が、
どこか音楽の「価値」が一部の人たちのものであることを象徴的に表しているの
ではないかという意見もありました。

ひさびさに、環境の「価値」について考えることができました。

終わったあとに「自分とは違う映画の見方を知ることができたので、楽しかった
です」と仰ってくださった方がいました。励まされますね。

11月は、「ソフィアの夜明け」という作品で行います。

乞うご期待。