中川です。
ほそぼそと続けているシネマ哲学カフェ。
10月の参加者は4名でした。
ブラジル映画祭の中から、音楽の「資源」という観点から環境問題を訴える
ドキュメンタリー作品「パウ・ブラジル」を取り上げました。
ブラジルという国の国号の由来になっているのに、自国民もあんまり存在を
知らないという悲しい樹「パウ・ブラジル」は、絶滅の危機に瀕しています。
でも、この樹が無くなったからって何が困るのか?
実はこの樹、バイオリンの弓の部分の材料として最も優れていると音楽家たち
の高評価をひとりじめにしているのです。染料として乱伐され、危機に瀕して
いる樹の評価が、音楽家たちによって語られていく・・・
まず、こんなことが話題になりました。
樹の価値と音楽という文化的価値が天秤にかけられているようだ。
樹を保護する意識は、音楽によって駆り立てられるだろうか。
ここで、映像を見た人たちの間で意見が割れました。
それは、音楽の「価値」に関わることです。
もし、この映画が一般的な「環境問題」の重要さを述べ立てているとするなら、
あんまり説得されないね、という意見がでました。
なぜなら、「音楽家」という人たちが「高尚な」文化としての音楽を奏でている
姿は、彼らの「価値」でしかないのであって、我々からは遠いものに感じられる
からです。
そのことはプロの白人たちが陶酔しながら演奏する映像に、遠いものを感じるか
どうかということにかかっていました。もちろん、それを遠くないと言う方もい
ました(その方は趣味でバイオリンをやっておられましたが)。
現地のブラジルの子供たちが、あまり楽しくなさそうにバイオリンを弾く姿が、
どこか音楽の「価値」が一部の人たちのものであることを象徴的に表しているの
ではないかという意見もありました。
ひさびさに、環境の「価値」について考えることができました。
終わったあとに「自分とは違う映画の見方を知ることができたので、楽しかった
です」と仰ってくださった方がいました。励まされますね。
11月は、「ソフィアの夜明け」という作品で行います。
乞うご期待。