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2011/02/03

哲学カフェ「あなたにとって人権ってなに?」

まつかわです。
ご報告が遅くなって、ごめんなさい。
1月25日(火)に開催された豊中人権まちづくりセンターでの哲学カフェ、寒い平日の夜にもかかわらず、18名の方が参加してくださいました。

テーマは「あなたにとって人権ってなに?」。
実はこのテーマ、最初にセンターの方から提案されたときには変更しようかとおもいました。人によってイメージがバラバラで「哲学する」のが難しいし、前回のアンケートで「もっとテーマを絞ってほしい」という声もあったので。しかし、様々な人権問題に取り組む場所にふさわしいテーマであること、ふだんこちらで開催されている講義形式の講座では扱えないテーマであること、そしてなにより、参加者が熱心で1回目の議論が非常に充実していたことなどから、挑戦してみることにしました。

さて、議論の内容はというと・・・

「差別語は人権問題じゃないか」
「仕事や発言が認められたときの、自分のことが認められているという安心感」
「戦争など命が危険にさらされる状態にないので、生活のなかで『人権』を意識することはない」
「お年寄りがトイレ掃除の仕事をしているのをみると、人権侵害ではないかと感じる」

・・・などなど、予想通り、多種多様な「あなたにとっての人権」が挙げられました。なかには、他の人の話をきいて「え!? それも人権に関わることなの?」なんて反応もあり。
そこで、開始から30分たったあたりで、進行役から「それぞれの考えの相違点と共通点に注目しながら、自分にとって人権とは何か、考えてみてください」と声をかけてみました。
すると、いくつかの争点が浮かび上がってきました。

  • 「人権は権利の一つである」という考えに対して、「『人権』は自分の存在が認められているという安心観を指すひとまとまりの言葉であって、『人間の権利』とは異なる」という意見
  • 「ある人と別のある人の権利と権利のぶつかり合い」に関する発言に対して、「権利は個人と個人のあいだにあるものではなく、社会的なものではないか」という意見
  • 「権利を主張する」という考えに対して、「権利は主張するものではなく行使するものである」という意見

しかし興味深いことに、これらの争点について対立する立場の人にじっくり議論してもらうと、根底では同じ考えを共有していることがわかりました。「個人と個人の関係にも、社会的な権力関係が反映されることはある」、「権利の行使が、具体的には主張という形であらわれることもある」、「自分が認められているという安心感を求める気持ち、それが人権を守ろうという意識の源なのではないか」などなど。

2時間みなさんの議論をきいて、「人権ってなに?」の答えを一言で表すのは難しいけれど、少なくとも次のことはいえるのではないかと思いました。それは、人権とは、社会全体がうまく機能するために誰かを犠牲にするような態度の対極にあるということです。
難しいテーマでしたが、思い切って挑戦してみてよかったです。
今年度の豊中人権まちづくりセンターでの哲学カフェはこれで終わりですが、また機会があれば、このようなふだんから人権問題に取り組む場所で、また対話づくりに関わってみたいです。


会場の部屋に展示されているパネル。
知識を一方的に与えるのではなく、
自分で考えられるよう工夫されています。


こちらは身近な同和問題について考えるパネルでした。
こんなパネルをきっかけに対話するのもいいですね。