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2013/10/11

シリーズ企画「経済を問い直す」を振り返って


三浦です。先月28日に「お金とは何か?」と題する哲学カフェを(再び)行ないました。全6回にわたって私と共に進行をして(そしてここに報告文を随時寄せて)くださっていた安田さんが、半年を振り返っての感想を記してくれましたので、代理で投稿します。
 
名古屋で、「経済を問い直す」というテーマで4月から続けられてきたシリーズも、先の928日を持って最終回となりました。最初のテーマ提案者としての縁からこのシリーズ企画に終始携わらせてもらいました、安田です。
 
シリーズが最終回を迎えた、ということで、今回はこのシリーズ企画自体を振り返っての報告をさせて頂きたいと思います。6回の内訳は以下のようなものでした。

4月 第1回:哲学カフェ「お金とは何か?」
5月 第2回:書評カフェ「評価と贈与の経済学」岡田斗司夫+内田樹著
6月 第3回:書評カフェ「文明の経済史」カール・ポランニー著
7月 第4回:哲学カフェ「市場とは何か?」
8月 第5回:哲学カフェ「会計/複式簿記とは?」
9月 第6回:哲学カフェ「お金とは何か?」

全回のテーマがはじめから決まっていたわけではなく、決まっていたのは初回のテーマと6回くらいのシリーズにしようということだけでした。ただ、第1回をやる頃にはもう、最終回は初回と同じテーマにしようということは決まってました。2~5回の議論がこの同じテーマについて考えるためのいろんな角度からの補助線引きになる(といいな)、というデザインです。願わくば、最終回で初回の自分と比べたときに「視野が広がった」と思える人が、継続参加した人たち(企画者や進行役含め)のうちに誰かひとりでもいるといい、という企画意図でした。

この企画の発端は、当時一参加者だった私の(単発の哲学カフェのための)「お金とは何か」というテーマ提案でした。その提案について三浦さんとメールで相談するうちに話が広がって、このようなシリーズ企画になりました。以前にカフェフィロで行われた全国統一企画「お金を問う」(哲学喫茶2号をご参照ください)や、当時から賛否を巻き起こしていたアベノミクスやTPPのような時事トピックとのつながりもあり、三浦さんには、始めたばかりの名古屋での哲学カフェのための「補助輪付き助走企画」的な意味合いもあってこうしたシリーズ企画を考えられたかと思います。

さて、初回から最終回まで参加してくれた方は実は一人いました。第5回のみ出られなかった方もいたので、その方合わせて二人、ほぼ全部の回に出てくれたわけです。このお二人が、最終回でのトークにおいて企画意図のような「視野の広がり」を体験されたかどうかは、、、残念ながらまだお聞きできていません。実は最終回だった第6回には、哲学カフェ初参加の方が偶然三人も集まり、初回参加以来の方一人と合わせて四人、と多数派になったため、継続参加組二人(と進行役二人)は、これまでの回での議論を踏まえたような発言はほぼできなかったのです。

考えて見ればこれは十分考えられることで、やはり、哲学カフェにおいては「継続参加を前提にデザインされたシリーズ企画」は成立しない、と気づかされました。もう少し正確にいうと、継続参加をつうじての「視野の広がり」は、仮にあってもそれを継続参加者同士で確認しあったり共有しあう機会はないかもしれないし、まして次回以降のカフェでそれを踏まえた上で発言することは許されない。たとえシリーズ企画であっても毎回、振り出しにもどって始めなくてはいけない。それを覚悟の上でしか、シリーズ企画は成立しない、ということです。

ただ、それを覚悟の上でなら、このようなシリーズ企画の哲学カフェにも、それなりの意味があるのではないか、とも思います。(このような、というのは、初回と最終回が同一テーマで途中は補助線テーマの回になっているシリーズ企画です。)もともとどんな人が集まってくるのかまったく分からないのが哲学カフェの醍醐味なら、参加者の間にいろんな「壁」があればあるほど、そして、そのような「壁」があることを参加者自身が意識しながらトーク参加できるほど、もしかすると逆にそれは成長の契機の豊富な「いい哲学カフェの場」なのかもしれません。哲学カフェが、形としては「言葉を介して問いの答を探そうとする場」でありながらも、単なる「正解探し」の場でも参加者各自の個人としての成長の場でもないとすれば。そうだとすれば、最終回において、継続参加組と初参加組の間にある種の「非対称な壁」(継続参加組には見えて初参加組には見えない壁)が生まれる可能性の高いこのようなシリーズ企画も、哲学カフェの一つのやり方として、多少作為的とはいえ、「あり」なのではないでしょうか。

なにかひどく自己弁護じみた報告になりましたが、、、。皆さんはどう思われますでしょうか。
 

なお、カフェティグレでの哲学カフェは、10月はお休みして11月から再開する予定です。